Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「ほんとだね。あ、俺傘持ってないや」

 聞き覚えのある声に足が止まる。
 恐る恐る振り返ると、永瀬が年下と思われる女性とこちらに向かって歩いてくる。そして私と目が合ったタイミングで足を止めた。

「あ、傘なら私持ってるんで入っていきませんか? 家まで、お送りしても……」
「ありがとう」

 礼を言ってにこやかに微笑んでいる。私の前ではあんな笑顔見せたりしないのに。あからさまな態度の違いにイライラする。
 どうぞご勝手に。可愛い子と相合傘して帰れてよかったね。
 心の中でイヤミを吐き捨て立ち去ろうとすると「川島」と呼び止められる。

「ちょうどよかった。今帰り?」
「……そうだけど」
「傘、入れてもらえないかな」

 永瀬は後輩らしき女性に私を差して「家が近所なんだ」と言うと私の隣に来る。そして小声で「頼む」と言った。
 よく分からないけど……困ってる?
 永瀬は私の折り畳み傘を奪い広げると「じゃ、また明日」と後輩に告げ外に出た。
 おい、待ってよ!!
 私も慌てて永瀬を追って傘に入った。

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