Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 今朝、私は永瀬に告白したはずなのだけど今の私たちの雰囲気は以前までと何も変わらない。でも、今永瀬の家に居て、永瀬が近くにいるという事実を思うだけで嬉しさや恥ずかしさ、色々な気持ちが入り混じってトクトクと小さく胸が高鳴りだす。確実に自分の中の気持ちの変化は感じる。眠りにつく前は色々と互いの気持ちを確かめ合いたい思いが強かったけど、今は気持ちが落ち着いている。
 試供品でもらった使いきりタイプのクレンジングでメイクを落とし、軽くシャワーで汗を流した。身体を拭いて服を着てさっと簡単にメイクをする。洗面所に置いてあるドライヤーを借りて髪を乾かす。短いから短時間で乾く。用意をすべて済ませると永瀬と一緒に外へと出た。

 やってきたのは二人で何度も入ったことのある近所のラーメン屋。深夜に訪れることが多かったから、夕食時で混雑している時間帯に来たのははじめてだった。少し待って、カウンター席に通された。注文した品が届いてこしょうを振りながら永瀬が突然突拍子もないことを言い出した。

「そもそも俺は、男女の友情なんかありえないって思ってる」
「突然なに!?」
「え? だから。朝おまえが聞きたがってたことを話そうかと」

 威勢のいい店員の声が飛び交う騒がしい店内でするような話ではないような気がしたけど、こんな雰囲気の中だから照れくささを感じることなく自分の気持ちを正直に言えるのかもしれない。

「ありえないって……と、いうことは初対面の時から私のことをやましい目で……」
「……それはないかな」
「……だろうね」

 そんな雰囲気も態度も少しも感じなかった。

「よく話すようになった頃にはおまえは杉浦さんのことが素敵とか言ってきゃっきゃしてたし。それから少しして付き合いだして……その頃はなんとも思ってなかった。あぁ、付き合えてよかったねーと素直に喜べたくらいで……」
「なんとも……って。少しくらいは……?」
「うーん……」

 本気で悩んでいる。少し傷ついた。
 でもなんとも思っていなかったのは自分も同じだからお互い様なのかな。

< 47 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop