Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

02 密会現場にて

 休日前にやり残した給湯室の片付けをするため、私は朝五時起きで自分の所属する部署内では一番乗りで会社に出社していた。

「はぁぁぁ…………」

 先週末に起きた出来事を思い出して早朝から大きなため息が漏れる。
 長年友人関係を続けていた会社の同期からの突然の告白……を飛び越えたプロポーズ。ワケが分からないよ。
 プロポーズされて、突然迫られて。
 そのまま相手の思うつツボになってたまるかとなんとか彼を部屋から追い出し事なきを得たけど……今でも正直信じられない。悪い夢でも見ている気分だ。
 「そろそろ結婚しない?」って言ってたけど……それって、交際をしながら互いを知り合い、コイツしかいない! って気持ちが高まる瞬間があってやっと出せるような言葉じゃないのかな?
 私たち、その言葉の寸前までオトモダチだったんだけど……。もちろん、今も現在進行形で。
 分からない。真意を確認したいけど正直会うのが怖い。永瀬の奴、どこかで頭でもぶつけてきたんじゃないのかなぁ……。

「綾、おっはよ」

 ぞくりと背筋が震える。
 聞き覚えのあるその声は、私を「綾」って呼んだりしない。今まで「川島」か「おまえ」って呼ばれてきた。それに低血圧の彼から「おっはよ」なんて機嫌良く浮かれた挨拶、されたことないんですけど……。

「な、永瀬……何してんの?」
「何って。今日俺早朝会議があってさ。だから早めに会社に来ただけ」

 入口に目を向けると今私の頭を悩ませる元凶が立っていた。
 中に入って扉を閉めると狭い給湯室がさらに窮屈に感じる。息苦しい圧迫感に無意識に後ずさったけどすぐに行き止まり。シンクに足があたって洗い場にまだ大量に残っている湯呑が揺れて音を立てる。

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