Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

15 小旅行先で告げられる衝撃事実

 緑に囲まれた温泉街を散策しながら、今の状況の説明を求めていた。

「キャンセルが出てちょうど午後から一部屋空くんだと」

 連れられた温泉宿は、永瀬の実家と古くから付き合いのある宿らしい。そこの主人とは知り合いらしく、直接連絡を取ってキャンセルが出たことをきいたらしい。
 古い歴史を感じさせるような建物だった。隠れ家的と言うか……まだ中には入っていないけど、期待を感じさせる趣のある雰囲気の佇まいにワクワクした気持ちになっている。早くチェックインの時間にならないかな。今はそれまでの時間潰しの最中だ。
 永瀬の実家が旅館だと聞いたのは数カ月前。イマイチまだピンと来てなかったけど本当の話なんだなぁ……。ご主人と知り合いでもなきゃ、連休中の混み合う時期に、キャンセルが出たとはいえ当日にいきなり宿泊なんかできないよね。

「都会にいるよりはまぁマシだけど、ここも暑いなー」

 空を仰ぐ永瀬を見上げる。
 何気なくどこかに行きたいと言った私の願いを聞き入れて連れてきてくれたのかな? 私が寝ている間に連絡を取ってくれて……

「なんだよ」
「ん? 別にー?」
「ニヤニヤして。気持ちわりーな」
「ふふふ」

 勝手に頬が緩むんだ。どうしようもない。

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