Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「ねぇ、何か言ってよ」
「何かって……」
「……とりあえず、顔が見えないから今の心情を言葉で伝えて」
「嬉しいよ、すごく」
「……どんな顔して言ってるの?」
「さぁ」

 私は今、急に無性に永瀬に会いたくなって顔が熱くなったよ。
 永瀬は電話の向こうで「春か……」と呟いた。

「永瀬は会社辞めたらどうするの? すぐに実家に帰っちゃうの?」
「うん、そのつもり。というかいいかげん帰らないとヤバイ」
「いつから帰ってないの?」
「就職してからは一度も……」
「だよね。いつでも会えたもんね……」

 ははっと苦笑いしている様子が伝わってくる。
 長期連休でも何日も家を空けるなんてこと一度もなかったから、だから永瀬のお家のことを何も知らなかったのもあるんだ。

「じゃあ、次会えるのは春かな? お正月は……」
「正月はたぶん。家の手伝いをさせられるから……」
「そっか。じゃあやっぱり春だ」

 土日で会えない距離ではないけど、最近では休日出勤も増えてきて予定が立て辛い。春までの辛抱だ。

「きっとすぐだよね。今でも一日が終わるのがめちゃくちゃ早いし春なんてあっという間……」
「生きぬけよ! 死ぬなよ!」
「おう! って、笑い事じゃないからね!?」
「ははっ!」

 永瀬は声を上げて笑うと最後に「待ってる」と言った。そして私は「うん」と返事をして電話を切った。

「私、お嫁に行くんだ……」

 呟きながら胸を抑える。電話を切ったら急に胸がどきどきと高鳴りだした。やっと実感が沸いてきたらしい。自然と口元が緩んでにやけてしまうんだ。

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