恋する時間を私に下さい
もう一冊の本も読みながら泣いてしまった。

先に読んだマンガのサイドストーリーで、女性の過去が丁寧に描かれてた。
深い心理描写の奥に、礼生さん独自の味がある。
これを本から拾っただけとは、とても思えなかった。


(…この気持ちの中には、ゼッタイ礼生さん本人の思いも混ざってる…)

最初に読んだ本の時も同じことを思った。
礼生さんはこの話を描きながら、誰かのことを想ってた。
だから、こんなにステキで、あったかい作品が描けたんだ…。


(誰のこと想ってたんだろう……)


モデルになった女性にシットしながら本を閉じた。
余韻に浸りながら、やっぱりやめさせてはいけない…と思った。


(この感動を伝えないと…)


大学から戻ってきたルナに、レターセットを買ってきて…と頼んだ。
メールやLINEで告げるような、軽いものにしたくなかった。

ルナは文具屋へ行って、「とびきりいいのを買ったよ!」と見せてくれた。

淡いサクラ色のレターセットは、白いリボンでト音記号が描かれ、桜の花のブーケが、ワンポイントのように散りばめられてる。ゴールドの点線で作られたチェーンはカーブを描き、上品で質のいい雰囲気を醸し出してた。

「これ…ラブレター用なんじゃない?」

自分が書くのはファンレターよ…とルナに言うと…

「ファンでもラブでも、そこに相手を想う気持ちがないと書けないでしょ!ゼータク言わないで!」

高かったんだから…と怒るルナを宥めてお礼を言った。
ファンでもラブでも、相手を想う気持ちがないと書けない…と言われたのは痛かった。


心を込めて書こう…と思った。
サクラ色のレターセットに相応しい言葉を、彼に贈ろうと決意したーーー。
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