恋する時間を私に下さい
VOL.20 サイドストーリー

1. アシスタント

『オガタ レイ』という漫画家を初めて知ったのは……

「編集部に行った時!」
「あ、オレも〜」

アラシとトドロキが同意見で盛り上がった。

「俺はコウヤを伝って…」

セイジは言いにくそうに答えた。

「……スグルは?」

トドロキが聞き返す。

「買ってたマンガの中で見た…」


忘れもしない3年前の『新人漫画賞募集』の文字ーーーそいつに俺とレイは、同時に作品を投稿してた。



漫画を描き始めたのは、高校に入ってからだった。
勉強ばっかするのが嫌になって、急な思いつきでやり始めた。

描きたいネタは幾つかあって、始めたら止まらなくなった。

(…一度くらい賞に投稿してみるか…)

軽い気持ちで応募したのは、大学二年の夏。

自分なりに頑張って書いたつもりだったけど……


……箸にも棒にもかからなかった。

新人漫画賞に輝いたのは、『オガタ レイ』というペンネームの奴だった。

キレイな絵を描く奴で、特に人物が上手かった。
主人公のみならず、脇キャラも丁寧に描かれてる。
背景はそこまで上手くもねぇが、話は面白い。

どんな顔した奴なんだろう…って、当然興味を持った。

(イケメンだろうか、ブサイクだろうか…)

ホストのバイトをしてたから、そんな事が気になった。

…女に不自由したことはなかった。
褒め言葉さえ言ってやれば、むこうが簡単にノッてくる。

『新人漫画賞』に輝いたのが俺だったなら、今頃こんな馬鹿げた毎日は送ってねぇ。
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