恋する時間を私に下さい
もしかして…と、隣のドアを見る。
誰もいない筈なのに、少しだけ嬉しくなる…。

スッと持ち上げて、カサカサいう音に気づいた。

(何だろ……)

ドアを閉めて中に入り直す。
玄関収納の棚上に本を置いて、鍋の蓋を開けてみた。

「わぁ…」

つい声が漏れた。
お鍋の中には、ぎっしりと詰められたお菓子がいっぱい。
何故かチョコばかりだけど…いったい誰が……


「あっ…柿ピーチョコ!」

甘辛のおつまみまで入ってる。
それから、こんな紙切れが……


『ご馳走さん』


……たった一言。
それしか書いてないのに。



(…礼生さんだ……)


ーーそう思ってしまった。

その小さな紙切れが、原稿の切れ端のようにも思えたから。


「……ヤダな…もう…バレてるじゃん……」

そう言いながら、何故か涙が溢れた。

昨日の彼と、この紙切れの中の彼がダブる。

同じ人間とは思えない人の別顏を、私は胸の中で噛みしめていた………。


< 51 / 206 >

この作品をシェア

pagetop