朔旦冬至 さくたんとうじ ~恋愛日和~
その日の夜。

帰宅していの一番に
陽和は携帯を握りしめた。

震える指で・・・
さっきのメモをそっと開く。

朔の力強い・・でも
形の整ったその字を見つめ
ため息をついた。

 ・・・うん。もう・・・
 覚悟を決めよう。

これで朔とはいつも
連絡が取れる状態になる。

それはきっと・・・
次の一歩を踏み出すことに
つながる・・・。

 私は・・・
 恋を・・・はじめる。
 朔ちゃんと・・・。

陽和は震える指で,
一つずつアドレスの文字を
入力した。

全部入れ終わったとき,
もう一度メモを確認した。

次は・・・
文章の入力。

 なんて…送ろうか・・・。

迷ったけれど結局,
最初は・・・他愛もない
文章を送ることにした。

”陽和です。
 土曜日はありがとう。
 とても,楽しかったよ。

 アドレス・・合ってる?”



すると・・・
5分もたたないうちに
返信があった。

”朔です。
 連絡ありがとう。
 こちらこそありがとう。
 俺も,楽しかった。”

陽和は文字を見つめて
胸が苦しくなった。


その日は結局それ以上
返事もできぬまま・・・
陽和は鼓動を抑えるのに
必死だった。



朔はさっき陽和から来た
メールを見つめながら
陽和の顔を思い出していた。

「わー・・もう・・・
 だめだ・・・俺・・・。」

朔はそうつぶやいて・・・
頬を抑えた。

頬が熱い・・・
体じゅうで「陽和が好きだ」と
叫んでいるみたいだ。

 ただ・・メールが来ただけ・・
 内容だって・・・そんな
 普通の・・メールなのに。

 それでも嬉しくて嬉しくて
 たまらない・・・。

 こんな状態の自分が,
 陽和と「恋愛」なんて
 できるんだろうか・・・。

朔は・・そう思って
頭を抱えていた。

あまりに陽和のことが
好きすぎて・・・
恋愛経験のない朔は
この気持ちを持て余していた。

 もう少し・・・
 ゆっくり進むべき・・
 なんだろうか。

このままでは,陽和と
まともに話もできそうにない。

もう少し冷静になってから
次のステップへ進もうと
朔は考えていた。
< 66 / 154 >

この作品をシェア

pagetop