超能力者も恋をする
就業時間は過ぎたが、仕事が終わらなく今日は残業になってしまった。
ちらりと加藤先輩の方を見ると先輩もまだ一所懸命にパソコンに向かって打ち込みしていてまだ帰らない様子だ。
先輩の頑張ってる姿を見たら、自分も頑張らねば!と奮起して、腕まくりしてまた仕事に戻った。

カタカタとキーボードを打っていると、
「ないーーー!!」
いきなり後ろから大きな声が聞こえてきた。驚いて振り返って見てみると、大島さんが青い顔をしてワナワナと震えていた。
「ど、どうしたんですか?」
「ぼ、僕のゆきりんの、大事な、杖が、な、無くなったー!!」
「…はい?」

最初意味が分からなかったが、大島さんの手の中にある、魔法少女のアニメキャラの女の子のキーホルダーを見て何と無く状況が分かってきた。
大島さんは、仕事は出来る方だけど、かなりのアニメオタクの35歳独身の先輩である。

加藤先輩も仕事の手を止めて見に来た。
「なになに?何か無くなったの?」
「加藤ー、間宮さん、ゆきりんの杖が無くなっちゃったんだよ。多分鞄の近くに落ちてると思うんだけど…。探すの手伝ってくれー!!」
「わ、わかりましたから、泣かないで探しましょう。ね。」
加藤先輩に縋り付いて頼む姿を見ると、若干引きつつも探さないわけにはいかない。
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