赦せないあいつと大人の恋をして
自分の居場所
 マンションに帰って食事を済ませて、お風呂にも入った。それでも龍哉からはメールも着信もない。
 きょうがバレンタインデーだという事も忘れるくらい忙しいのだろう。

 仕事の出来る男はカッコイイと思う。どんな仕事だって、それをも楽しんでしまえる男は凄いと思う。職種や役職や立場や、そんな事ではなくて……。ここが自分の居場所だと決めて頑張れる気持ちが素敵だと思う。

 今の世の中、そんなに簡単じゃない。それも良く分かってるつもりだ。働きたくても働けない人も、きっとたくさん居るんだろうから。

 仕事がある。必要とされている事に感謝しなければと心から思う。私は幸せなのだと充分過ぎるほど感じている。
 温かい家族もいる。そして龍哉もいてくれる。これ以上、何を望む事があるのだろう。

 その時、携帯の着信音が鳴った。
「はい」

「あぁ、俺。来てくれたんだ」

「うん」

「きょうはバレンタインデーなんだな」

 ……やっぱり忘れてる……。

「そうよ。仕事だったの?」

「さっきまで会議で。ごめん。メールも出来なかった」

「ううん。気にしないで」

「チョコありがとう」

「うん。義理チョコだから……」

「何だ。義理チョコか。喜んで損した」龍哉は笑ってる。

「嘘よ。生まれて初めての本命チョコなんだから」

「えっ? そうなのか? それは光栄だな。嬉しいよ」

「ちゃんと食べてね」

「うん。高そうなチョコだよな。食べるのが勿体ないよ」

「私も同じチョコを買ったから」

「自分にプレゼントか?」

「この一年頑張ったよねっていう自分へのご褒美なの」

「そうか。ああ、ところで今週末は連休になりそうなんだ。どこかへ行こうか?」

「本当? う~ん。私は龍哉とゆっくり出来ればそれでいい」

「そうか? もし行きたいところがあったら考えといて」

 龍哉が連休なんて付き合うようになってから初めて。一緒に居られるだけで良い。今は龍哉の傍が私の居場所。
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