赦せないあいつと大人の恋をして
実花(みか)
 その頃、実花は隼人の店でアルバイト。何故だか特別忙しかったきょうは、いつもの五時を過ぎても店に残って居た。

「実花ちゃん、ごめん遅くなって。もう上がってくれて良いよ」

「はい。……あのう、お話ししたい事があるんですけど……」

「うん。なに?」

「あの……。ここでは……」

「そう。じゃあ、食事にでも行こうか。お腹空いただろう」
 隼人は実花を近くの洋食屋に連れて行った。

「僕はカツカレーにしようかな? 実花ちゃんは何にする?」

「私は……」

「ここはオムライスが絶品だよ」

「じゃあ、オムライスにします」

「カツカレーとオムライスね」注文を済ますと

「それで話って?」

「あぁ、もういいです。次にします。また今度聞いてください」

「何? そんなに話し難い事なの?」

「いえ……」

 日曜日の夕食時。人気の洋食屋さん。人がたくさん居て落ち着かない。こんな所で話せないと実花は思っていた。隼人さん女心を全然分かってない。

 美味しい夕食を済ませて二人で店を出た。
「早崎さんって素敵な人ですね」

「そうだね。男なら誰でも好きになるんじゃないかな。大人だし綺麗だし、何より品がある。良い家に生まれたからって上品になれる訳じゃない。貧しい家に生まれても上品な人は居る。それは、その人に生まれつき備わっているものなんだと思う。綾さんは、家も家族も申し分ない。彼女自身は、もっと申し分ないよ。素敵な人だ」

「結婚するんですか?」

「綾さんのような人と結婚出来たら、男は生涯幸せでいられる気がするな。あぁ、実花ちゃん、気を付けて帰るんだよ。僕はまだ仕事があるから」

「はい。お疲れさまでした。失礼します」

 言えない。言えなかった。隼人さん、綾さんの事を褒めてばかりで……。あの人のどこがそんなに良いのよ。私の方が隼人さんを好きなのに……。ずっと好きだったのに……。
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