赦せないあいつと大人の恋をして
寂しがり屋
 車を走らせながら色んな話をした。
「そういえば俺たち、まだ知らない事ばかりだよな。たとえば血液型とか誕生日とか他にも色々と」

「そうね。じゃあ血液型は?」

「俺はO型」

「私はA型」

「誕生日は俺は5月28日双子座」

「私は2月11日水瓶座」

「えっ? それって今度の日曜日?」

「うん」

「何で言わなかった?」

「今、言ったじゃない」

「そうじゃなくて、もっと早く言ってくれたら良かったのに」

「私、来週、誕生日なんだけどって?」

「そうだよ。お祝い仕損なうところだったじゃないか」

「そんなの、いいのに……」

「いや、駄目だ。君がこの世に生まれた大切な日だろう。生まれてくれたから今こうして一緒に居られるんだし、感謝しないとな。来週は俺、仕事は休めるから、どこかに行こうか?」

「どこかって?」

「どこが良い?」

「そんな急に聞かれても……」

「じゃあ、俺に任せてくれるか?」

「うん」
 私が生まれた大切な日。そう言ってくれるだけで充分なのに……。

 それから少し走って彼は車を停めた。可愛い建物が見える。

「ここ、どこ?」

「俺が通ってた幼稚園」

「本当に? そうなんだ。とっても可愛い幼稚園ね」

「うん。担任の先生が短大を卒業したばかりの若い可愛い先生だった」

「その先生のこと好きだったんでしょう?」

「何で?」

「なんとなく……」

「優しくて元気な先生だった。今はここの園長先生だって聞いた」

「へぇ、会いたかったな。きょうは日曜日だから居ないわよね」

「そうだな」

「可愛い園児だった?」

「どうかな? いたずらして叱られてたような気がするけど」

 でも私には寂しがり屋のおとなしい園児だった彼が、なぜか想像出来ていた。
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