赦せないあいつと大人の恋をして
綾の誕生日
 いつの間にか眠ってしまっていた。ベッドの上で毛布も掛けずに携帯を握りしめたままで。その携帯の着信音で目が覚めた。目をこすって携帯のディスプレイを見ると十一時を過ぎている。

 電話は龍哉から
「ごめん。起きてた?」

「ううん。ベッドで眠っちゃってた」

「今、仕事終わったんだ」

「えっ? 今まで仕事だったの?」

「うん」

「そう。仕事まだ忙しいんだ」

「でも明日は休めるよ。朝、六時に迎えに行くから」

「六時? そんなに早く? 私は大丈夫だけど……。龍哉、眠る時間もないわよ」

「俺は大丈夫だよ」

「駄目。月曜日も仕事でしょう? 無理しないで欲しいの」

「綾を京都に連れて行きたいんだ」

「京都?」

「うん。京都の湯豆腐を食べさせたい」

「嬉しいけど、またにしない? 別に明日じゃなくても行けるから。ね」

「京都の冬はいいぞ。めちゃ寒いけどな」

「お願いだから無理しないで。私は龍哉と一緒なら、それでいいの。京都は、またいつか連れてって。時間の余裕がある時に。楽しみにしてるから」

「分かったよ。綾の言う通りにするよ」

「うん。明日は体を休めて、ゆっくり眠って」

「そうするよ。じゃあ、十一時に迎えに行く」

「うん。待ってる」

「じゃあ明日な。おやすみ」

「おやすみなさい」

 仕事で疲れてるのに……。京都? 何で京都なんだろう。
 それからベッドに入って私もゆっくり眠った。今夜は幸せな夢が見られますように……。


 翌朝、携帯のアラームが鳴る前に目が覚めた。

 おはよう綾、誕生日おめでとう。二十八歳の朝を迎えた。
 だからって特別どうって事ない。きょうは昨日の続きだし、明日は普通にまた続いて行く。こうやって年を重ねて行くのかな?

 龍哉、まだ眠ってるんだろうな。体、少しは休まったかな? 
 きょう、京都の日帰りなんてさせたら明日の仕事に響くに決まってる。
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