赦せないあいつと大人の恋をして
本当の龍哉
 龍哉はソファーから立ち上がって、どこかに行ってすぐ戻って来た。私の前に立ち

「綾、ごめん。俺が悪かった」

 そう言うと私の前に跪いた。

「俺、綾がどうすれば幸せになれるのか、ずっと考えてた。俺と一緒に居ても、綾を幸せにする自信がないんだ。最初から苦しめて傷つけて泣かせてばかりいた。俺、三十年間生きて来て、一度も女性を幸せに出来た事がないんだ。俺は誰も愛せない。本気で愛された事がないから、愛し方を知らないんだと思う。だけど綾に出会って、ずっと気になってて……。いつの間にか本気で好きになっていたんだと思う。でも愛し方を知らない俺は結局、綾を傷つける事しか出来なかった。間違いなく愛してくれる男と一緒に居るべきなんだと思い始めてた。綾なら、もっと良い男に出会える。きっと幸せになれる。綾は俺の傍に居るべきじゃない。そう思ってたんだ」

「ずっと、そんな事を考えてたの?」

「ごめん。本当にごめん。俺が馬鹿だった」

「責任取るって言ったじゃない。ずっと私の傍に居る、もう泣かせたりしない。大切にするって言ってくれたでしょう? あれは嘘だったの?」

「嘘じゃない。綾が俺なんかを好きになってくれた。すごく嬉しかったんだ。あの時、綾に言った言葉は全部、本当の気持ちだ」

「だったら龍哉は、ちゃんと本気で人を好きになれるんじゃない。風邪で看病してくれた時、本当は優しい思い遣りのある人なんだと思った。あの時から……龍哉を好きになっていたんだと思うの。間違いなく人を愛せるじゃない。愛された事がないって言ったけど……。きっと本気で龍哉を好きだった人が居たと思う。龍哉が愛されている事に気付かなかっただけ」

「綾……。俺なんかで良いのか?」

「龍哉が良いの。龍哉じゃなきゃ駄目なの。どうして分からないのよ……。龍哉のバカ……」

「あぁ、俺はバカだ。綾を本気で手放そうと思った大馬鹿者だ」
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