赦せないあいつと大人の恋をして
ひとつ
 龍哉の温かい腕の中に抱きしめられていた。龍哉が好き。愛してる。ずっと傍に居たい。
 抱きしめていた腕を解いて龍哉が私を見詰める。自然に唇が重なっていった。龍哉の情熱的なキスを受けながら……。私は決心していた。唇が離れた時……。

「お願いがあるの……。抱いて……」

「綾、無理しなくていいよ。今のままで俺は充分幸せだから」

「龍哉に愛されてるって感じさせて欲しいの。だから……」

「綾……。本当にいいのか?」

「龍哉のすべてになりたい……」

「綾……」

 あの時だって龍哉は私を好きでいてくれた。方法は間違っていたかもしれない。

 もちろん乱暴されたから好きになった訳じゃない。そんな女、地球上の何処を探しても居ない。有りえない。抱いてしまえば女は振り向くなんて絶対にない。それは声を大にして言いたい。

 本当の龍哉の人としての優しさに気付いたから愛した。男と女だって人と人の心の繋がりがなければ信じ合えない。愛し合えるはずがない。



 龍哉は、これ以上ないくらい優しく愛してくれた。龍哉の熱い体を素肌で感じながら……。今までずっと消す事の出来なかった棘が静かに消えていくのを感じていた。

 溶けてしまいそうだった。私の体なのに……。私じゃないみたいに……。どうしていいのか分からないくらい……。

「綾、愛してる」
 龍哉の声が私に魔法を掛ける。
「綺麗だ。綾……可愛いよ」

 恥ずかしい。恥ずかしくて堪らないのに……。

「綾、嫌なら言って……」

 嫌じゃない……。龍哉になら何をされても……。

「龍哉……」

 髪をかき上げられて優しくキスされた。
「綾、大丈夫?」

 私は小さく頷く。
 愛する人とひとつになれる悦びを初めて知った……。
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