赦せないあいつと大人の恋をして
美しい女神
 暖かな部屋のベッドで毛布に包まっていた。龍哉の胸に体を預けて……。

 綾は夢を見ていた。
 暖かい陽射しに春の訪れを感じながら……。冷たく凍て付いた心が柔らかく温かく解れていくのを感じていた。
 綾は、ふと目を覚ます。

     *

 龍哉は穏やかな綾の寝顔をずっと見ていた。大切な宝物を腕に抱いて……。どんな事があっても、もう二度と傷つけない。綾の美しい寝顔に固く誓っていた。

「目が覚めた?」

「私、眠ってたのね」
 まだ眠そうな綾の髪を撫でながら……

「可愛い顔してね。食べちゃいたかったよ」

 恥ずかしそうに伏せ目がちの綾は
「私ね、すごく幸せな夢を見てたの」

 綾の声は少しかすれて堪らなく色っぽい。

「うん。どんな夢?」

 綾の頬に触れながら聞いた。

「教えてあげない」

 綾の微笑が自分に向けられる事が龍哉には何よりも幸せな証し。

「綾、愛してるよ。もう離さない。誰にも渡さない」

     *

「うん」

 龍哉の胸にもう一度顔を埋めながら綾は幸せだった。心が、お互いの想いが繋がった事が……。

 綾には、まだ女としての体の悦びは良く分からない。ただ愛する龍哉の腕の中で幸せだと思える事が悦びだった。龍哉に愛されて少しずつ大人の女になっていくのだろう。

     *

 街を歩けば誰もが振り返るほどの美人であり装いの趣味も上品。しかもモデルのようなプロポーションを持っていた。そんな綾が、まるで男を知らないだなんて信じ難い事実だった。

 龍哉にとって綾の存在は天から落ちて来た穢れを知らない天使。目の前に現れた眩しいほどに美し過ぎる女神のようだった。

 龍哉は、キメ細かな柔らかい肌の綾を胸に抱きしめていた。これ以上の幸せが他にあるだろうか?

 綾に巡り会い、綾を愛するために生まれて来た。それまでの出会いは、どれもが間違いだったのだと思えるほどに。

 今の龍哉にとって綾が人生のすべてだった。どんな事をしても必ず幸せにすると抱きしめた白い肌に誓っていた。
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