男装騎士~それから~
消せない過去を、呪いたくなる。
恨みたくなる。
余計自分が許せなくなる。
こんな、彼女みたいな人を殺してしまっていたかもしれない。
そんな事実に押しつぶされそうになる。
その時、馬車が大きく揺れ、異様な雰囲気にのまれた。
「な、なに?」
馬の声。
そして、騎士たちの声。
「お前はここにいろ」
馬車から顔を覗かせると、野党のような薄汚い服装の男たちが俺たちの馬の周りを囲っていた。
手には武器を持って襲いかかろうとしていた。
「落ち着いて制圧しろ!殺すな!生きて捕えるんだ!」
俺は騎士たちに指示を出すと馬車の中に戻る。
ユキは険しい表情を浮かべていた。
こういう所は、元騎士だと思う。
普通のお姫様なら、きっと怯え震えでもしていることだろう。