あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
3
「社長。」

私が事務所へ入ると、珍しく社長が戻って来ていて、席に座っている。

60代の素敵なオジサマ。

多分小夜子さんと歳はそんなに変わらない。

きっと若い頃にはモテたんだろうな。

そんな事を思わせる短髪にがっちりした体つき。

社員よりも外に出て頑張る姿には、いつも驚かされる。

取引先に、各現場にどこにでも現れるようだ。

「お疲れ様でした。」

私は社長の所にお茶を入れて持っていった。

「おお、相原さん、ありがとう。」

社長は湯呑に口をつける。

それを見て自分の席に戻ろうとした私に、社長は話しかけて来た。

「佐川が退職する事は聞いたか?」

「はい、つい先ほど。そちらの手続きをしないといけないですね。」
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