あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
22
仕事を終え、私は会社を出た。

今晩は郁也が外食だから、真っ直ぐ自分のアパートに帰る。

「萌香。」

駅のそばで声を掛けられた。

私は何気なくその声の方を見ると、驚きで動けなくなった。

「…篤弘…。」

面接が終わった時間からかなり時間が経っているはず。

その様子を見ると、恐らくこの近くで時間を潰していたんだろう。

面接時と同じスーツに同じ鞄を持っている。

「まさかこんな所で萌香と会えるとは思っていなかったよ。」

そんな事を言いながら篤弘は近づいてきた。

私は何も話す事はない。

だから全く言葉が出て来なかった。

「元気だったか?あれから全く連絡も取れなくなって心配していたんだぞ。」

そんな事をぬけぬけと言う篤弘の顔を眺めながら、私は冷ややかな目を篤弘に向けた。
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