それでも忘れられないまま

久しぶり

学校も終わり、ジリジリと日が肌に照りつける。
校門を目の前にして、足がすくむ。
家は比較的学校から近い。
10分もあれば余裕と言ったところだ。
けれど、夏の補習。
大学受験を控えた僕、森下大地はとぼとぼと徒歩で学校まで来た。
自転車はなんとなく、めんどくさく感じ、徒歩で来てしまった。
それが災いだった。
暑くて暑くて、足が思うように動かない。
首に汗が流れる感触が気持ち悪くて、手で拭う。
僕は男子バスケ部に入っていて、キャプテンを、していた。
バスケが強い高校ではないと思う。
市内では優勝し、県大会で敗れたのだ。
最後の試合で泣くものもいれば、こんなものかと、笑う奴もいた。
僕はどちらでもなかった。
ただただ漠然としていたのだ。
思い出にそう、浸っていると、信号の所まで来たようだ。
校門を出て、歩いて数歩の信号。
もう直ぐこちらが青になる時だった。
「もーーりしたっ!!!」
遠くの方から僕を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと僕より5センチ高い程の身長の男がこちらに手を振っている。
校門から手を振っているのは、三島裕太。
野球部のキャプテンをしていた人物だ。
三島の家と僕の家は比較的近く、三島の親も、僕と同じで、両親が教師。と、いうことで、僕の親とも繋がりがあった。
凛とした目元が特徴的だ。
キラキラとした眩しいほどの笑顔こちらに向けて、走ってきた。
「森下、今帰り?」
そう問われて、首をこくり、上下にふった。
「そっかぁ〜・・・・・一緒に帰ろーよ?」
少しハスキーな声が僕を刺激する。
―なぜだろう・・・・・こんなに三島を意識して見るのは初めてかもしれない。―
「うん!」
笑って返事を返すと、『よっしゃー!』と、威勢よく、拳を突き上げた。
三島と改めてこんなにも話すのは、中学生2年いらいだろう。
『久しぶり』
心の中で呟いた。

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