小さな恋の物語 *短編集*
「おい、待て佐藤!」
「……っ! 離してください!!」
ようやく追いついて逃げる佐藤の腕を掴む。
するとキッと睨みながら掴む手を離そうとする。
……やっぱりな…………。
「なあ佐藤。俺、お前とゆっくり話がしたい」
なるべく優しく、落ち着かせるように話す。
きっと佐藤は俺に何か用事があったに違いない。
だってそうじゃないと、俺がよくいる数学準備室近くなんて通らない。
そこは教室がある本館から少し離れているから……。