遠すぎる君

「バカにはもう会ったの?」
「バカって……まだ。」

遼の名前が『サッカーバカ』になりつつあるのを困ったなぁと思っていると、歓声が耳元で大きくなった。

「頑張って~」
「優勝するぞー」

サッカー部面々がフィールドに姿を表した。

青蘭の青を基調にしたレギュラーユニフォームを着た遼は最後の方に登場した。

しばらくフィールドを見ていた彼は青蘭の応援席に視線を移す。

青蘭の応援席は結構人が埋まっていて、きっと私なんか見つけられないだろう。

「おー出てきたね。」
足を組んでスポーツドリンクを飲みながら永沢くんが言う。

「ふぅ~ん。まぁサマにはなってるね。」
身を乗り出しながら美幸は小バカにしたように言う。

私は……ただ遼を見つめながら、二年前応援に行った試合を思い起こしていた。

また負けたら……あの時みたいに離れていくのだろうか。

縁起でもない。
なんて事を考えるんだ、私は。

遼は勝つんだ。その為にやって来たんだから。

だけど不安が押し寄せてきて、私は思わずすがるようにイルカのネックレスを服の上から掴んだ。

その時、遼と目が合った……ような気がした。

遼は目を丸くして驚いたあと、フッと笑ってすぐに顔を反らした。

「あれ?アイツしおりに気付いたのかな?」
「笑ってたような、ね?しおり。」

やっぱり笑ったのかな。
気付いてくれたのかな。

黙ったままでいると

「ま、どっちにしてもそのうち気付くだろ。どーせキョロキョロするんじゃないの?」
「言えてる~」
ケラケラと二人は笑ってたけど、遼はもう真剣な顔つきで意識を他に飛ばすようなことはしなかった。





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