遠すぎる君
エピローグ

「あんたたち、他所他所しすぎ!」

ビシッと人差し指を突き付けられているのは遼と私。

「……な、何がだよ……フツーじゃねーかよ……」
「どこがフツー?手も繋がない、話さない、見つめ合わない、これじゃあ今日初めてのお見合い?」

「見つめ……っ?いや、喋ってるよ…………なぁ?」とすがるようにこちらを見た遼の顔は真っ赤。

「そう……だよね?」
私もなんとなく耳まで熱い。

今日は遼が初めて補習を受けなくても良くなった記念(?)に美幸と永沢くんとダブルデートとして、遊園地に来ていた。
永沢くんと美幸が腕を組んで歩きソフトクリームを二人で食べ合っているのに比べ、
私と遼は横に並んで歩いてはいるものの、会話もそれほどなく、美幸から見たらカップルではないらしい。

「仕方ないよ、美幸。こいつらは中学からやり直してるんだから。手を繋ぐとこからだよな。」
ニヤリと笑う永沢くんは、いつもより意地悪だ。
多分、遼がいるから。

「あんた、教師目指してんでしょ?そんなんじゃ……生徒にバカにされるわよ……」
「その前に、大学入れないとムリだし。」

ハハハーと笑う二人に遼はキッパリと言い放った。

「絶対なるし。絶対受かるし。」

怒ってるわけでもなく、静かにでも力強い口調で。

だけど急に自信がなくなったのか、

「…………多分。」

「あんたね~!私の感動を返せっての!」
「やっぱりバカ?全部台無しだな……」

遼はジーンズのポケットに手を突っ込んで唇を尖らせている。
美幸は呆れた顔でその様子を見ながら

「ま、踏ん張りはサッカーで培ったでしょ。最後まで足掻きなさいよ。あと一年以上あるけど……」

あまりにも長い遼の受験生活を考えると気が遠くなりそうだ。
頭を抱えた遼の横で私は笑った。
 
「明日から死に物狂いでやればなんとかなるだろ!」
「俺、一年半も死に物狂い……?マジで死んでしまう……」

項垂れた遼は二人に大笑いされていた。
なんて、楽しいんだろう。幸せなんだろう。
遼が居てくれるだけで、私の世界はキラキラと光ってる。

「よしっ!明日からみっちりしごいちゃうからね!」

今はこんな可愛くない事しか言えない私だけど、きっと遼なら夢を掴める。そう信じることができる。
そしてそうなった時、私ももう少し素直に気持ちを伝えられるようになっているから。

だから、一緒に歩んでいってほしい。

一緒に大人になっていこう。




これからは ずっと二人で




















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