遠すぎる君
外部受験するの?

急にそんなことを言われて
言葉を亡くした。

親友の美幸にさえ言ってない事を
彼はなぜ知ってるの?
返事をしないで立ちつくしていると

「ごめん。これは個人情報だよね。
偶然知ってしまったんだよ。」

悪びれなく彼は言う。

「俺、生徒会役員だろ?
外部受験の生徒の資料の中に
クラスメートの名前を見つけたって訳。」

私の喉元からゴクッと音が鳴る。

「誰にも言うつもりは無いよ。でも…」

私の目を真っ直ぐ見つめていた。

「理由を聞いちゃ駄目かな…」

彼の長いまつ毛は瞳に影を落としていた。


聞きにくいことを聞いてしまった罪悪感か。
永沢くんは
叱られた子供のように肩を落として
視線は足元に落ちていた。


「ううん。実はね…」

清水寺に向かいながら私は

両親の離婚の理由
経済面の不安
そして外部受験の志望校まで
遼とのこと以外はすべて話した。 

「東高か…すごいな!」

「スゴくないから、必死なんだよ!」

笑いながら清水寺についた。

「俺にできること、あったら言ってよ。」

はじめて人に話して心のモヤモヤがなくなったみたい。
そして彼の優しい言葉がそこにスッと入っていて
心から喜べた。

「ありがとう。永沢くん…」

修学旅行は終わり
私たちは帰路へついた。
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