遠すぎる君
修学旅行が終わってから
しおりはよく永沢と話すようになっていた。

旅行のグループが一緒だったかな…

俺もしおりとまわりたかったな。

しおりと仲の良い松井が同じグループで
キャーキャーとうるさかった。

ほんとなんでしおりは松井なんかと一緒にいるんだろう…

松井は旅行中ずっと
俺に何か聞きたいような素振りだったけど
それを回避するべく
一人にならないように行動していた。

しおりとのことは
自分でもどうしていいかわからないから

ただ、
もう笑ってくれないんだろうということだけは
わかってたけど…


しおりは永沢といるようになって
前より楽しそうに笑うようになった。

それが俺をひどく動揺させた。

もう俺にはあの笑顔は向けてくれないのに
永沢には笑ったりするんだ…

女友達になら許せた。
でも俺以外の男なんて…!

しかも永沢としおりが付き合ってるような噂が立ち
悔しくて余計にしおりを見れなくなってしまった。
だってしおりを見たら
永沢と仲良く話している姿を捉えることになるから。


時々顔を出している部活に今日も寄ってから帰宅。
一緒に引退した同級の杉本と中庭が見える通路を通ったとき
「あれ?中田じゃん。」

中田

その言葉にビクッとして中庭を見た。

ベンチに腰掛けたしおりは一生懸命喋っているが…

…泣いてる?
松井や永沢も一緒にいる。

一瞬立ち止まったが
見なかったことにしてすぐに歩き出すと
杉本はすぐに追ってきて

「遼…いいのか?」
気を使いながら聞いてきた。

「…なにが…?」
努めて冷静に返す。

「中田…しおりちゃん、だろ?
メチャクチャ好きだったんだろ。もう、いいの?」

好きだった…
過去形になってることに苛立ちを覚えながら
何も答えなかった。

いいわけないだろ!

一緒に帰ってたあの期間がすごく短くて
距離ができた時間が長すぎて
忘れそうなぐらいなのに

それでも戻りたいと願ってる。

でもどうしていいか解らない。

あの6月からずっとこんな調子で
俺はもう壊れそうだった。


しおりが
あの頃みたいに笑いかけてくれたら

俺はきっと手を伸ばして彼女に触れられただろうに。

そうしたら永沢がいたってきっと元に戻れるのに。

すべてをしおり任せにして
勇気を出さず
ちっぽけなプライドを守っていたんだ。

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