遠すぎる君
早々に大学を決めてしまった先輩とバレンタインデート。

去年は本命は遼だった。

今年は
「チョコはいらない」という先輩には苦味のあるコーヒーガナッシュを用意して。

先輩が4月から通う大学へ向かう。

「しおりちゃんに見てもらいたい。」

大学はそれはもう素敵なところだった。
有名国立大ということで、国費もふんだんに使われているだろう。
設備が整っていそうで、そこにいる学生も日本を背負って立つ自信に満ちてる。

ここの学生になるのだ、先輩は。

「できたら2年後、来てほしいなぁ」

私もそうできたらどんなにいいか。

でも私は決めている。

高校卒業後は就職する。
早くお母さんを助けたい。

星蘭の高等部を諦めた時点で進学は諦めていた。

それに、
奨学金を申請してまでやりたいことはなかった。
早く社会人になりたい。

それは先輩には言えなかった。

帰りに定食屋さんでご飯を食べて
繁華街の様なところで先輩はふと足を止めた。

繋いだ手をぎゅっと握って
先輩は「俺のものになってくれる?」と不安気に聞いてきた。

いつかいつかと思っていた瞬間が来たのだと
汗が出てくる。

私が迷っていると思ったのか、先輩は
「ごめん。ウソウソ。」
と、笑った。

その顔が切な気で、胸の奥がキュッと締め付けられた。

そして先輩の懇願するような瞳を見ながらコクンと頷いた。

すると手を強く握ったままホテル街へ歩き出す。

私たちは足早に近くのホテルへ入った。

一番安い部屋へ着くと先輩は「はぁっ~」っと息をつき、
「こんなところでごめん。」と申し訳なさそうに謝った。

先輩も緊張してるんだ。
勿論、私もバクバクなんだけど。

「シャワー…浴びてもいいですか……?」

とりあえず、心を落ち着けたかった。

「ダメ。横にいて。」
「え……?でも…」

まだ入り口に立ったままの状態で唇を塞がれた。



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