遠すぎる君

7月5日。

順調に勝ち進めた県大会決勝になってようやく、
俺は強豪青蘭高校のベンチに入ることができた。

ベンチにも入れなかった試合は応援席からずっと
『俺なら。俺を出してくれ。』
そう願い、ヤキモキしていた。

サッカーはチームワーク。
だけど確かに個人の技巧も大切なんだ。

俺はまだチームを引っ張れるとは思わない。
先輩後輩の壁も厚い。

だけど……俺はそれを乗り越えなきゃいけない。今大会で。

そうしてベンチに座っている今、応援席に座る準レギュラー達の想いがヒシヒシと伝わってきて、足がすくむようだ。

「高坂!いけるか?!」
「はいっ!」

突然の選手交替。
一人の負傷だった。

あんなに望んだ事だけど、中学の時とは比べ物にならない周囲の期待と緊張感だ。

靴紐を結び直し深呼吸した。

しおり、俺はお前に堂々と会いに行きたい。
その為の一歩だ。


俺はフィールドに足を踏み入れた。
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