遠すぎる君

先輩とお別れしてから暫くボーッとしてた私は何気に美幸と連絡を取った。

「もうすぐ、誕生日だね。」

美幸はちゃんと覚えてくれてる。

「忘れられないよ~七夕だもん。」

素直に喜んだ。そしてもう、今年は先輩は祝ってくれないんだ……と胸を締め付けられた。まるでそれを見破るかのような「先輩に祝ってもらうの?」という美幸に言葉に詰まる。

「えっ…と……」
「え?もしかして……え?」
「うん。お別れしたんだ。……なんだか長く続かないみたい、私……」

私を慰めつつ、うろたえている様子の美幸にはきちんと話した。

先輩がちゃんと付き合ってくれていたこと、私がそれに応えられなかったこと。

……最後の結末だけは言えなかったけど。

「そっ…か。もしかして、まだ……引きずってんの?」
「え?」

聞き返しながら、美幸の言わんとすることはちゃんとわかっていた。
遼の事だ。
「高坂くんが、まだ好きなの?」
と直球で聞かれ、『好きじゃない』とは答えられなかった。
「わからない……」が精一杯だった。

「元気にしてる?」「相変わらずサッカーバカ」「かわいい彼女が出来たんじゃない?」「知らないけど、サッカーばっかしてるから無理なんじゃない?」

他人事のように話した。
だけど「高坂」って美幸が口にする度に胸が熱くなってくるのがわかった。

遼だって頑張ってるんだな。

いつか試合を見に行こう。

そうすれば私は強くなれるような気がしていた。

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