裏ギフト
近くにいたクラスメートが悲鳴をあげて飛び退く。


「ほら、これで寂しくないでしょ?」


初とつぐみが大声で笑いながらそう言った。


あたしはお弁当の上でうごめく虫たちに視線を向ける。


残念ながら、このお弁当はもう食べられそうにない。


そう思い、ため息を吐き出す。


まだお腹は減っているし、購買でパンでも買うしかない。


でも、その前に。


あたしは虫ごとお弁当のおかずを掴んでつぐみの前に付きだした。


「なによ」


驚いて目を見開いているその口に、あたしは無理矢理おかずをねじ込んで黙らせたのだ。


少しでも胃に入るように、口の奥まで一気に押し込む。


「う……ごほっ!」


つぐみはむせて涙目になりながら、虫を吐き出している。


それでも小さな虫は食べてしまったかもしれない。


その様子に満足し、あたしは笑う。


「おすそ分け。みんなで食べたらおいしいんでしょ?」


「ちょっと……!」


つぐみの横で青ざめている初を無視して、あたしはまた教室を出たのだった。
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