あなたが私にキスをした。



「…愛しているよ、レイカ」



耳に残る切ない声と、唇に触れた熱い感触。

目を開けると薄暗闇の中に、美しい涙を流すあなたがいた。




どうして泣いているの?



誰を想って泣いているの?





私はあなたの頬に手を伸ばして、大切なものを拾い上げるようにその涙を拭った。

するとあなたは、目をまん丸に見開いて、しばらく声も出せずに私を見ていた。




「…キミは、いったい…!?」




私は小さく首をかしげる。


どうしてそんなに驚いているの?



「うそだ、まさか、そんな…」


そう言ってあなたは、私の頭の先から足の先まで何度も何度も見つめた。



私は薄暗いアトリエの中央に立っていた。

着ているものは白い薄手のワンピースだけで、他には帽子も靴も何もない。



ぐるりと周りを見回すと、たくさんの透明な彫刻たちがアトリエのあちこちに並んでいる。


私は小さな台座からぴょんと降りて、その作品をひとつひとつじっくり眺めた。


アトリエを照らすわずかな照明に、キラキラと輝く作品たち。



人差し指で少しだけ触れると、


ひんやりとしてそれが氷から作られたものだと分かった。


鳥やライオン、天使や花など、ありとあらゆるものがある。



私がそれらの作品を食い入るように見つめていると、


いつの間にか

あなたは私の隣に立っていた。



「さ、…寒くないか?」



そう言われてみると、少し寒いような気もする。

意識したせいかなんなのか、


くしゅん、


と小さなくしゃみがひとつ出た。



するとあなたは身につけていたマフラーを優しく私の首に巻きつけて




「おいで」





そう言って私の手を引いてアトリエを出た。


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