あなたが私にキスをした。
私も気になって、そっとあとをついていく。
ガチャ、と玄関が空くと男の子の声がした。
「ひさしぶり」
「ユヅキ、どうして?!」
「ちょっと家出。ね、泊めてよ」
ユヅキという男の子は、ずかずかと家の中に上がってくる。
私は慌てて隣の部屋に隠れた。
「おいおい、待てって!ちょっと家出ってなんだよ。」
「いいだろ、べつに。レイカさん出て行って、さみしく一人暮らししてんだろ?」
「こっちには、こっちの事情が…」
明らかに動揺しているトキワ。
ユヅキくんという人は、どうやらレイカさんのことを知っているようだ。
「…あれ、だれかきてたの?」
さっきまで私が飲んでいたコーヒーカップを指差して、その男の子が首をかしげた。
なんとなく、ここにいることがバレてはいけないような気がして心臓がどきどきした。
「あー、まぁちょっとな…」
「なんだよ、誰?まさか、新しい彼女とか」
「そんなんじゃねーよ」
トキワはそう答えて、慌ててコーヒーカップを片付けた。