あなたが私にキスをした。

「これ、あなたが作ったの」

「えぇ、まあ。動物彫ってこいって、研究室の課題」

「すごいねぇ、なんか生きてるみたいで…思わずなでたくなっちゃったよ」



私がそう言うと、トキワは少し考えたあと、おもむろにその子猫を抱き抱えて、無言で私に差し出した。




「え?」




困惑する私。



「もらってやって、この子」

「え、でも」

「飼い主募集中だったから」




そういってにっこり微笑むトキワに、いっしゅんにしてとりこになった。



また彼に会いたくて、もっと彼に近づきたくて、トキワが『ねこサークル』に入っているという情報をつかむなり、わたしもすぐに入部した。

そこで話するうちに、意気投合して二人で会うことも増えていった。

トキワの作品はどれも生き生きとしていて、まるでいまにも動き出しそうで、見ていてとてもドキドキした。





私はあっという間に、トキワの作品はもちろん、彼自身にも強く惹かれていったんだ。


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