狐と嫁と溺愛と
去年までは、大河さんが別宅と呼んでいる屋敷に住んでいたらしいけど、今は隠居生活だって。



全ての権限を大河さんに譲り、悠々自適に暮らしてるらしいんだけど…。



怖くて怖くて…。



「ナナ、腹は減らないか?」

「あっ、そう言えばそろそろお昼だね」

「この路地に馴染の店がある。行くか?」

「行ってみたい‼︎」



大河さんの隣を歩き、路地に入った。



すれ違う狐やその他の妖が大河さんに頭を下げて、時折親しげに話しかける。



本当に大河さんは、ここの権力者なんだ。



その度に、あたしは笑顔で頭を下げているだけだけど…。



「ここだ」

「普通の…お店だ…」

「久しぶりだな。邪魔するぞ〜」



お店ののれんをくぐり、中に足を踏み入れる。



ふわっと香る、いい匂い…。



「大河様、久しいな‼︎」

「隠居してるじじいに会いに行くついでにな」

「おっ⁉︎そちらが噂の花嫁さんか?」

「ナナ、白銀だ。昔からの馴染」



シロガネさん…。



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