狐と嫁と溺愛と
お風呂に入りに行った大河さん。



今はきっと、大河さんの気持ちに応えられない。



ご飯を食べ続ける気にもなれず、そのままベッドへ。



なにも考えたくないのに、頭の中がいろんなことでいっぱいになって行く。



春乃との思い出や、妖っぽい言動はなかったかとか。



そんなことしか考えられず、大河さんがお風呂から出てきて、寝たふりをした。



「寝てんのか…?」

「…………」

「お前の気持ちがわからねぇ…。ごめんな、軽率にそんなこと言って…」



頭を撫でながらそう言われた。



大河さんは妖。



人間の感情はわからないのかもしれない…。



春乃が妖だったなんて、信じたくない…。



それはあたしが妖を嫌いとか、そういう意味ではなくて、今まで信じていたものが崩れ去った気分。



あたしは春乃に対して、どんな態度で接すればいいの?



後ろから大河さんに抱きしめられ、静かに涙が流れた。




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