狐と嫁と溺愛と
困った顔をした大河さんは、無言になってしまった。



こんなのあたしのワガママだって、わかってるんだけどね。



仕事が始まると数日会えなくなるのなんて当たり前だし。



だったら、こっちにいて甘やかされて、ずっと抱っこされてたい。



無言に耐えられず、花火の話に話題を変えた。



しばらくして花火が終わり、地面に降り立つ大河さんは、そのまま歩いて縁側にあたしを下ろした。



「さて、俺は見回りに出てくる」

「今から行くの⁉︎」

「祭りの後は少なからず揉め事が起こるもんだ。俺みたいな地域密着型の当主は働かないとな」

「なにその、密着型って。なんかおもしろい…」

「当主のくせに子どもの家にお邪魔したり、護衛もつけずにラーメン食いに行ったり。そんなことするのは俺だけってこと」



そうなのか…。



普通の当主はそんなことしないのか。



「ケガしたばっかりなのに…」

「ん、だからお前の力、貰っていく」



そう言った大河さんは、雫ちゃんと蘭月さんがいるのにキスをした。



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