狐と嫁と溺愛と
騒がしさが近い。



もしかして…大河さん?



バキバキッと、何かが壊れる音が聞こえて、襖が目の前に吹っ飛んできた。



「うちの娘、返してもらうぞ」

「おっ?大河じゃなくてジローかよ」

「俺の娘に手を出したんだ。ただで済むと思うなよ?」



いつもより声の低いお父さん。



手には血に濡れた刀が握られていて。



真っ黒な袴姿は、やっぱり死神にしか見えない。



来てくれた、お父さん…。



「俺が招待したのは右腕じゃなくて本体なんだけど」

「そんなもん、どうだっていい。娘を返せ。ナナの前で、ムダに殺生はしたくないんでな」

「交渉決裂。大河連れてこい」



睨み合いはどちらも引かない。



お父さん、お父さん…。



「傷つけちゃ…ダメだよ…」

「ナナっ…」

「そういうの、嫌い…」



口の中が痛くて、喋るのも一苦労。



誰も傷つけない、そんな世の中になればいいのに。



お父さんが誰が傷つける姿は…見たくないよ…。


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