まだ本当の恋を知らない
バスルームから出ると、ソファーの上でうたた寝している海斗。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだし、海斗の寝ているソファーの前に座る。

ミネラルウォーターを飲みながら、ぼーっとしていると不意に後ろから抱きしめられる。

私の首筋に海斗の柔らかな唇が少しずつ上に上がってくる。
「ん…」

私の吐息ともつかぬこの声が海斗に火をつける。

頬を引き寄せ、二人の唇が重なる。

触れるだけのキスが徐々に深くなる。

「ん…あ……」

海斗の舌が唇を割って入ってくる。
それを受けとめながら答える。

情熱的な甘いキスに溺れそうな感覚になりそうになったその瞬間、やっぱりさっきの部長の顔が浮かび上がった。

「待って、ねぇ海斗待って。」

海斗を押し戻す。

「なんだよ。」

今まで、聞きにくくてどうしても言えなかったあの一言を海斗に投げかける。

「私たちってなんなの?
恋人?体だけ?」

「………………」

「長く居すぎて分かんないよ。
言葉で気持ちを言い合ったこともない、始まりも曖昧で。
海斗といて胸キュンしたりドキドキしたり…そんな気持ちにもなったことない!」

「俺は付き合ってるつもりだった…
言葉なんか無くても分かってるって思ってた…

お前がそんな風に感じてたなんてショックだよ。」

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