冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!

ーーー 進藤side ーーー


今日子さんに騙された。
夏希さんが大木さんに誘われるって言われたら、デートに誘われると思い込むじゃん。
結局、誘われたは誘われたけど、それは月曜日の外出先、展示会の手伝いの話だった。
しかも断っていたことも知ってて。


僕は何も考えられず『246』を飛び出して会社まで走った。
仕事ができて、人間的にも尊敬できる大木さんが相手なら叶わないと思いながらも、いても立ってもいられなかった。


実際、二人がいるところを目の当たりにしたら怖じ気づいてしまったんだけど、途中、大木さんのスマホに大木さんの彼女らしき人から連絡が入り焦りが疑問に変わった。


夏希さんと大木さんの話から推測してみると…
今日子さんの思わせぶり発言で僕は踊らされてたことにやっと気が付いた。


僕は忘れ物とごまかした手前、何かを探すフリをして席についたけど、自分の行動の恥ずかしさで夏希さんを見れない。
そんな事とは知らず、夏希さんが僕の席にやってくる。


「そんなに大事なもの忘れた訳?髪の毛乱れ過ぎ!
メガネはずり落ちてるわ、シャツは汗でビショビショだわ…。」

と呆れながら、僕の顔をじっと見てクスっと笑った。
そして僕の顔に手を近づけて来た。


「えっ?」

僕は相当驚いた。


ずり落ちていたメガネをそっと直してくれただけだったんだけど…
その時の夏希さんの優しい目が僕の瞳に映って見惚れてしまった。
それに気が付いた時、恥ずかしくて僕は目を逸らしてしまった。
夏希さんにとって、そんな行為はなんでもない事なんだろうけど。


僕にとってはココ数日で何ともハッピーな気持ちになる出来事だった。



夏希さんと駅に歩く途中、『246』に戻る?と聞かれたけど、恥ずかしいのと今日子さんへのちょっとした抵抗で戻らないと言った。


すると夏希さんも「じゃ、私もおとなしく帰ろう。」と言いながら駅への道を歩いていた。


夏希さんとは何度もこうして駅までのみちのりを歩いているけど、今日は少し緊張している。
僕の夏希さんへの気持ちがどんどん大きくなってることを思い知ったから。



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