冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
今日子は鋭い。
なにも言わなかったけど、1週間、私達の様子を見て何か感じていたんだろう。

さっきまで座ってた今日子の席に荷物だけ置いた進藤がかしこまって私の前に立った。
するといきなり頭をバサッと下げて


「夏希さん、ホントにすみませんでした。
酔ってたとはいえ、大変失礼なことをしてしまいました…」

頭を深々と下げたままの進藤。
丁寧すぎる言葉遣いがやけに笑える。



「・・・・・・・・・・」

私がなにも言わずに黙っていたら、少しだけ顔をあげて様子を見ようとする進藤。
その上げたおでこに思い切りデコピンを食らわす。



「イテッ!!!!!!!!!!」

不意打ちのデコピンに、おでこを手で押さえ、本気で悶える進藤がおかしくて思わず笑ってしまう。
すると進藤もおでこを抑えながら堅かった表情を緩めた。




「今度また酔ってやったらデコピンじゃ済まないからね。」


「じゃ、酔ってない時にします。」

と屁理屈のような言葉を返して来るから、またデコピンをする仕草をしてみると、


「冗談ですよ!勘弁して下さい。」

と、おでこを手で隠しながら進藤はやっとイスに腰を下ろした。
いつもの進藤に戻ってる。
あの送別会の日から、進藤を意識してしまってた私もいつも通りに戻れてる。


成二が彼女と一緒にいても、進藤が近くにいることで穏やかな心でいられた。

進藤が私のそばから離れ、他の女子と話していると嫌な気分になった。

進藤が強引に唇を奪って来たことにドキドキし、一瞬でも身を委ねてしまいたいと思った。
進藤に…


私、どうかしてる。




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