冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


「進藤亮介です。入社3年目で企画部からの異動です。
宜しくお願いします。」



真っ黒い髪の毛は、シャンプーの後、ただ乾かしただけだろうなと思えるほどの自然体。
背は180cmくらいだろうか。
両サイドにいる上司よりも随分大きく見える。
黒縁のメガネで地味と言えば地味。
図面を管理する管理課へ異動してきた。



「見た目は…可もなく不可もなくだね。
企画部でも与えられた仕事はきっちりと最後までこなすけど、斬新なアイディアを出したり、リーダー的存在になったりしないごくごく普通のタイプだったって。

社内公募でうちの部署を選んで志願したらしいよ。
うちはいつも人手不足だからね。誰でも良かったんじゃない!」
 

朝礼が終わって、今日子が私に耳打ちする。



「企画で人間関係でも悪かったのかな?」


「それは無いみたい。
むしろ上司に可愛がられてたし、成二も可愛がっていた…って…。
あっ!」

と、今日子が口を抑えた。



「ごめん。
異動の話を聞いた頃、情報を仕入れに企画部に行ったら成二がいてさ。」



「いいよ、別に。
元々同期で仲良かったんだし、成二と今日子が話してるのだって自然でしょ?」



「うん。
私も久しぶりに成二と話したんだけど…夏希のこと、聞いてきたよ。」



このひと言で、胸の奥がズキっと鳴った。



「…なん…て?」

やっぱり気になって、聞いてしまう。



「"あいつ…どうしてる?"って。
何を今更って言ってやったけど、かわいそうになるくらい情けない顔をしていたから攻撃できなかった。」


攻撃って。
口が達者な今日子のそれは相当怖いけど、それをできないほどの情けない顔なんて…
どうして? 


ううん、私には関係ない。
もう過去の人だもん。
そう思っても胸がズキンとしてしまう。





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