冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


どれだけバス停にいただろう?
どれだけ涙がこぼれていたんだろう?
靴ズレした傷がズキズキと痛む。
もう疲れたな。


何も考えられず、行き交う車のヘッドライトだけを眺めていたら、そのヘッドライトを遮るように目の前に車が停まった。


と同時に運転席から、慌てて飛び降りて来る人影。
思考回路がほぼ停止状態になっている私に誰かが駆け寄って来た。
恐る恐る焦点を合わせてみるとそれは・・・



進藤だった。




「夏希さん!!!!!」

進藤が私の横にドサッと腰を下ろしたと同時に、座ったままの私をきつく抱きしめる。
私は言葉も出ないほどの安堵に胸をなで下ろす。
ただただその温もりに包まれていた。



「進藤・・・」

進藤の肩に顎を乗せたまま、最初に言葉を発したのは私だった。
進藤は私を抱きしめたまま、離そうとしない。
どんどんきつく抱きしめて来る。



「苦しい・・・」

苦しくても優しい進藤のぬくもり。


「あ、すみません。」

やっと進藤が力を緩め、少しだけ体を離し、私の顔をのぞき込む。
腕は私の背中に回したままだ。


「本当に心配したんです。」

進藤は唇を噛みしめて、私から一度目を逸らす。
けれど背中に回された腕には、再び力が入る。



「ごめん。」

今度は私が進藤から目を逸らし、
うつむいてしまった。
もう一度、進藤と視線が合ったとき、進藤がじっと私をみつめてる目は、慈愛に満ちているように見えた。


「立てますか?
とにかく夜はまだ冷えるから車に乗ってください。」

と、私の腕を取り立ち上がらせてくれた。
靴ズレの痛みに顔がゆがんだ私を進藤は見逃さなかった。



「けがしたんですか?」



「靴ズレしちゃったみたい。」



「歩けますか?」


「うん、歩ける。」

と言う返事も聞かぬまま、進藤の腕が私の膝の下に回され、ひょいっとお姫様だっこをされてしまった。



「ちょっと!!!!進藤、下ろして!!!」

ジタバタと足を振っていたら進藤がバランスを崩す。
ふと立ち止まった進藤は、子供を叱るときのように「めっ!」と睨み、私の耳元に唇を寄せて「おとなしくしててください。」と囁いた。
私は不意の出来事に顔を赤らめ、否応なしに車に運ばれ、そっと助手席に乗せられた。





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