君の花嫁~大学生編~


ある夜。


「真琴お姉ちゃん、ご飯なあに?」


私がキッチンに立っていると、義妹である莉奈が手元を覗き込んできた。


「今日は生姜焼き。こっちのおかずは出来たから、莉奈ちゃん持って行ってくれる?」
「はぁい」


莉奈は言われた通り、副菜のサラダやおかずをテーブルへ持っていく。
伊織の異母妹である莉奈は今年で小学校3年生になった。莉奈の実母は現在アメリカで療養中であり、父である私の義父も仕事で帰らないことが多いので、実質莉奈の面倒は私達夫婦とお手伝いさんだ。
しかし、それも今年で終わる。
莉奈の母親である春香さんの体調がかなりよくなり、秋から莉奈は母とともに生活するためにアメリカへ渡ることになったのだ。
忙しい父と暮らすよりは母の側の方が良いだろう。それに父も何かと理由をつけてアメリカへ行っているため、今よりも家族らしく生活が出来るのではないだろうか。


「んー、お姉ちゃんのご飯美味しい。これはお兄ちゃんも胃袋捕まれるよね」
「あはは。そういえば伊織も美味しいって言ってくれてた」


最近は大人びておませなことを言うようになった莉奈に思わず笑顔がこぼれる。
なんだかんだと一番近くで私たちを見守ってくれたのは莉奈なのかもしれない。


「今日お兄ちゃんは?」
「大学の後、お義父さんの会社に行ってるよ」
「この時間だと接待に付き合っているのかな」


言いなれない’接待‘は少し下っ足らずだ。
夕飯はいらないと言われてきているから、たぶん接待に付き合っているのだろう。


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