君の花嫁~大学生編~
大学生で付き合っている人はいても、結婚している人はそうはいない。
目の前の男性の反応ももう慣れたものだ。
大抵の人は驚く。
「伊織、どうしたの? 授業は?」
私は突然現れた伊織に驚きながら声をかける。
もう伊織はいつもの表情に戻って、何事もなかったかのように私を見下ろした。
「ん? 移動中に真琴が見えてさ、真琴を追いかけるようにさっきの男が付いていったから」
だからわざわざ来てくれたというのか。
ごく当たり前のようにサラッと言われ、赤面してしまう。
「赤くなってるし」
「なってないし!」
そう言って私の手を取り、歩き出した。
その背中を見つめながら思う。
高校時代である結婚当初。まだ気持ちが通じ合っていなかった頃、肇君に冗談で付き合わないかと言われたことがある。そのとき伊織は、
『結婚しているんだから、大して気にしなくても大丈夫』
そう思っていた。
それが今ではこうして気にしてくれている。
大切にされていると実感がわくのだ。