君の花嫁~大学生編~

眉間に皺をよせたまま私を見る。
なにか怒らせることでもしただろうか。
そう思いながら見つめ返すと、再びため息。そして、いつもより低いトーンで口を開いた。


「真琴、どういうことかわかってるのか?」
「え?」
「いくら小国とはいえ、一応一国の王族が来日するんだ。皇族や政府をすっ飛ばして家に泊まる。交流があるとはいえ一般の家にホームステイするんだ。普通ならあり得ないことだぞ」
「そうね。あり得ないわ」


あり得ないことが起こる。それはよくわかっている。
しかし、こういう事態なら私より伊織の方が慣れているのでは?
幼い頃の写真には、どこぞの貴族やらと撮ったという写真があるくらいだ。

しかし、伊織は私の前に立ち、じっと見下ろした。

あ、また背が伸びた気がする。


「知らない男が同居するのが面白くないっていったら、真琴笑うか?」

低いトーンのまま、話した言葉に不機嫌の理由を知った。



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