君の花嫁~大学生編~
するとカインは子どものように頬を膨らませた。
「日本人は礼儀を重んじ過ぎだよ。ここでは僕はただの留学生だ」
怒るのそこ?
伊織の嫌味に気がつかないカインは、はぁぁとため息をついた。
「僕は伊織と真琴と年は変わらない。仲良くしたいんだ」
「仲良くしたいなら、まず日本のマナーを覚えてください」
「マナー? マナーなら完璧だよ」
「礼節のマナーじゃない。カイン、よく覚えておいてください。日本で女性にベタベタするとセクハラと訴えられますよ」
「No!」
カインは信じたくないというように頭を抱える。
その間に伊織は食事を終えた。
そして私に優しく微笑む。
「先に用意して待ってる」
「あ、うん」
そう言って自室へと戻っていった。
「伊織は、君が大切なんだね」
伊織が去ったあと、カインはボソッと呟いた。
「え?」
「大切で、でも凄く臆病だ」
そう言うカインの目はどこか気の毒そうにしていた。
どういうことだろう?
「カイン? 伊織は臆病な性格じゃないよ」
「そうだろうね。臆病とはいいすぎか。怖がり、の方が合ってるかも」
「どういうこと?」
私が首を傾げるとカインはニッコリ微笑んだ。
「たぶん真琴はわからない。でも僕はすぐに分かった」
ますます意味がわからなかったけど、カインは「伊織と仲良くなりたい」と笑った。