君の花嫁~大学生編~
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カインが我が家にホームスティするのは一ヶ月。
その間に何もなければ良いと思うのだけど、どうやらカインの素の性格はとてもフランクのようで、人との距離が近いらしい。
「あ、おはようございます。カインさん」
「おはよう真琴。カインでいいんだよ」
そう言いながらカインはにっこり微笑んで、朝食の用意をしていた私のエプロンの紐を指でもてあそぶ。
「えっと……カイン?」
「Good 」
そう間近で微笑む。
なんとも整った顔で微笑まれると反射で顔が赤くなってしまう。
すると突然目の前を新聞で塞がれた。
「カイン。その距離で話をする必要はあるのでしょうか」
顔をあげると伊織が新聞で私とカインの顔の前を遮り、冷たい目でカインを見ている。
「Good morning。朝から顔が怖いよ? 伊織 」
「おはようございます。カイン、日本では大学へ通うのでしょう? 母国のように家庭教師は来ません。早く朝食を食べちゃってください」
そう言って席に着くと、カインは呆れたようにため息をついた。
「伊織! その言葉はなんとかならないのかい? まるでアルバルトのようだよ」
「何を言ってるんですか。アルバルトさんは国へ帰ったでしょう」
「そんなの分かってる。そうじゃなくて、伊織はもっとフランクに話せないのか?」
「仮にもいくら世間に知られないくらい小国でも、貴方は一国の王子ですからね。一応、礼儀は尽くしますよ」
伊織の言葉に思わず食べていたご飯を吹きそうになる。
サラッと嫌味をいれたなぁ。