俺様主人の拾われペット
-仁美said-






「………。」





あれから千夏を置いて近くの公園に来た。

そこのベンチに座って
1人で頭を冷やす。





(……あんな気持ち、初めてだった。)





自分の中の理性が全て
黒い何かに染められて行く感覚。



千夏があの男とキスをしたと聞いて
もうあの感覚を止められなかった。




-------嫌だった。

自分のそばにいた千夏が
横取りされたようで
不愉快だった。




…千夏は俺のものだ、誰にも渡さない


そう想ったのが強くて
さらに黒いものを増殖させた。


そうなったらもう衝動的になってしまって

気づいたら千夏を押し倒していた。







(……何やってんだよ俺。)






この気持ちが何なのか
この歳になって分からないわけでもない。



これは…"嫉妬" だ。


独占欲から来た嫉妬だった。







(……ここで会ったんだよな、千夏と。)





ベンチからすぐそばの
大きな木の前を見つめる。

俺と千夏が出会った公園の入り口だ。





あの日からまだそんなに日は経っていない。

なのにこんなにも懐かしく思えるのは
千夏との毎日が濃すぎるせいだろうな。



…本当に、千夏が来てから全てが変わった。



家出をきっかけにグレたらどうしよう、とか

学校サボるんじゃないかと思って毎朝いつもより1時間早く起きて起こしに行ったり

寂しくないように食事は欠かさず一緒に食べたり

変質者に会ったら、と思って送り迎えをしたり




(過保護な親かよってくらいに…構ってやったつもりだった。)





でも

本当はそんなことが目的じゃなかった。

そんなのは後からつけたオマケだったんだ。





俺があいつと

ただ一緒にいたかっただけだったんだ。





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