サヨナラの向こう側
「・・・ごめんなさい、好きな人がいるんだ」



私の返事に、慶はそっと私を離した。



「千広が好きなのか?」


「違うよ、千広は幼なじみだよ。


かなわないかもしれないけど、まだあきらめたくないんだ」


「そっか。


じゃ、俺もあきらめない」


「えっ?」


「千広がライバルかと思ってたけど、誰が相手でも俺はあきらめねーよ」




そう言って、何事もなかったように歩き出した。




夏休みの最後の日、私は人に好かれる喜びを知った。


慶には申し訳ないけど、相手が先生だったらいいのに、って想像してしまった。




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