サヨナラの向こう側
「はい、どうぞ」


慶は、さりげなく入り口のドアをおさえてくれた。


「ありがとう」




案内されたのは、開放的な窓が正面にあるソファー席だった。


カップルシート、ってやつかな。


落ち着いた深紅のソファーは、周囲が気にならない、ほどよい距離感で並んでいる。



「ここのコーヒー、timeの次に好きなんだよ。


パンケーキもうまいよ」


「そうなんだ」


結局、注文は慶にまかせることにした。



店員さんが注文した品物を並べてくれるまで、普段通りの話をしていたけど、店員さんの気配がなくなると、


「今日はとことんつきあうから、美久が好きな人のこと、ちゃんと話してくれる?」


と、慶は唐突に聞いてきた。



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